いろいろな企業を見ていると、安否確認サービスの導入に失敗しているケースが多く見受けられます。多くの企業が高額な安否確認サービスを導入していますが、本当にその企業にとって必要なものなのでしょうか。

安否確認サービスとは

安否確認サービスとは、地震や水害等の災害が発生した場合に、社員に対して一括で安否確認を行う有償サービスです。(一部無償のものもあります。)

多くの社員が働く企業では、社員全員の安否を確認するのは大きな負担となります。しかも、災害直後は電話回線やオンライン通信回線の輻輳・混雑によりなかなか連絡がつかない状況となります。

安否確認サービスは、災害を検知して自動的に安否確認を発信しますので、回線の輻輳・混雑が発生する前に連絡することができるというメリットがあります。

安否確認自体はとても重要

安否確認そのものが重要であることは間違いありません。矛盾したことを書くようですが、安否確認はBCP(事業継続計画)の活動の起点となるため、捉え方によっては最も重要なものと言えます。

BCPというのは、突き詰めて言えば、災害で減少した経営資源(ヒト、モノ、カネ等)を効率よく事業に再分配することです。再配分が迅速・適切にできるからこそ事業継続や早期復旧が実現できるわけです。

経営資源の中で最も重要なのは言うまでもなくヒトです。どれだけ設備や金が潤沢でも、それを活用するための人材がいなければ全く意味がないからです。つまり、BCPのスタートラインに存在するのはヒトです。

安否確認は、企業が災害後に開始するBCP活動の最初の一歩であり、ヒトというリソースの状況を確認するための重要な活動です。

安否確認サービスの内容をBCPに反映できるのか

では、安否確認が重要なのに、なぜ安否確認サービスの導入が問題なのかという話になってきます。

安否確認サービスは事業継続という目的を実現するためのツールに過ぎません。しかし、安否確認サービスを導入しただけで満足してしまって、自社のBCPにサービスを落とし込む作業がないがしろになっているケースが多く見受けられます。

このような企業では、いざ災害が発生して大量の安否確認データが送られてきても、それを処理する体制が整っていないため、サービスの価値は全くBCPに活かされません。

発災直後の安否情報の価値は低い

サービス側にも問題があります。そもそも、災害発生直後から回線の輻輳・混雑が発生するまでの数分の間に社員自身が自分安全かどうかを把握することができるのでしょうか。

安否確認サービスの自動発信システムでは、東日本大震災のような長く揺れの続く超巨大地震であれば、揺れている最中に電話やメールが着信することもあり得ます。このような状況で誰が自分の安否を判断できるのでしょうか。

また、東日本大震災の犠牲者は9割以上が津波による溺死とされています。津波は地震発生から早くても5分程度経過してから到達し始めます。つまり、津波を引き起こす海溝型地震では、地震発生直後の安否連絡など全く意味をなさないということになります。地震で無事だったとしても津波に巻き込まれてしまうことが考えられるからです。他にも様々な二次災害が考えられます。

津波や二次災害による被害を考えると、一次災害直後の安否確認情報は情報としての価値が低いと言わざるを得ません。

安否確認連絡が被害を拡大する危険も

さらに、津波の到達の恐れがある沿岸部の人にとっては、逃げる時間が1秒遅れればその分津波に巻き込まれる可能性が高まります。まさに生と死の狭間での1秒を争う緊急事態です。そのような状況で安否確認のために足止めをしてしまうことは、BCPの前提となる「命を守る」という行為そのものを阻害してしまう可能性があるのです。

そうでなくても、発災直後は命を守る行動を取らねばならず、安否確認の報告などしている暇がありません。そのような通知は被災者にとっては有害・邪魔なだけです。

しかしながら、どれだけ素早く返信できるかを競うような訓練をしている企業が多くあるのが実態です。

何のための安否確認なのか再考を

安否確認は事業継続という目的を達成するための手段・ツールに過ぎません。当然、安否確認サービスも事業継続という目的のために役に立つことを確認して初めて導入が検討されるべきものです。

具体的な安否情報の活用見込みもないまま導入するのは経営資源の浪費に他なりません。しかし、安否確認サービスに限らず、このような事態はBCP策定の現場で日常的に発生しています。実効性の高いBCP策定には、地に足の着いた考え方を常に継続する必要があります。