BCP訓練・演習はシナリオが重要

1月31日、神奈川県内で一斉にミサイル訓練が実施されました。ミサイル訓練自体を批判するわけではありませんが、神奈川県が何をしたかったのかよくわからない訓練でした。一部の市町村は住民の混乱を避けるために警報音を鳴らさない等、自治体によって異なる運用を行っていたことから、各市町村の担当者も訓練に戸惑っていたことがうかがえます。

今回の訓練の実施理由は「神奈川県はJアラートが鳴ったことがなく住民に周知するため」ということでしたが、それだけでは訓練を行う動機としては不十分でしょう。

実効性の高いBCP策定のためには訓練・演習が重要です。しかし、神奈川県のミサイル訓練のように目的も不明確なままやみくもに行うことはお勧めできません。

BCPの訓練・演習の目的は、参加者が、与えられた情報からリスクを読み取り、それにどう対処するかを自ら考えることです。そのため訓練・演習のシナリオは参加者にわかりやすいように工夫して作成する必要があります。

主催者が「簡単な状況だけ設定したら後は何とか自分達で考えてやってくれるだろう」と参加者に依存してしまうと、大抵の場合参加者は右往左往するだけで何もできずに終わってしまいます。

シナリオを具体的に設定すると議論の幅が狭まってしまわないかと不安になるかもしれません。しかし、誰でも簡単に気付くような論点を用意しておいた方が議論は盛り上がります。

もっとも、シナリオで縛り過ぎた訓練というのも問題です。あらかじめ配られたシナリオを読み上げ、それに従った行動を取るだけの訓練も存在します。このような訓練はシナリオと全く同じ災害が発生した場合は有効かもしれませんが、災害というものは想定の範囲外で発生する場合も多くあります。

結局のところ、参加者に対して指針は示しつつも、柔軟な発想を阻害するほどにまで拘束しないというバランスの良いシナリオ策定が重要ということになります。質のいいシナリオがあって初めて訓練・演習に実効性がもたらされると言えます。