被害想定が難しい場合のBCP策定方法

企業のBCP策定ご担当者からは、なかなかBCP策定が上手くいかないという声がよく聞かれます。その原因は様々ですが、どの程度の被害を受けるのかが想定できなくて困っていると言う方も多くいらっしゃいます。

ある地方銀行では、本社近くに原発があるため原発事故に対処するためのBCP策定に乗り出しましたが、原発事故は事例が少ないため、被害想定にかなり苦労されているということです。

例えば、原発が放射能漏れ事故を起こした場合、本店から約50㎞離れた支店に本店機能を移転させるという案に対して、その程度の距離の支店を移転候補とすることが妥当なのかとの疑問が出ていると言います。

しかし、原発事故に限らず、地震、津波等の自然災害やテロでも、想定した被害と実際の被害が異なることは珍しくありません。むしろ一致することの方が少ないと言っていいでしょう。ですから、被害想定ができないからと言っていつまでも立ち止まって議論しているわけにもいきません。

被害想定はあくまでも想定に過ぎません。前回のコラムでも書きましたが、想定外の被害に対応するには、柔訓練・演習を繰り返して柔軟性を養っていくしかありません。

被害想定が上手くできない場合には、被害想定の幅を広げた上で、被害想定に直接関係ない部分に注力するのが合理的です。

例えば、原発事故における本店機能移転については、50㎞離れた支店が使えなくなっても、他にどこか使える支店があるはずです。そうであれば、どこの支店にでも移転できるように工夫するとか、移転候補支店を複数に増やす等して被害想定の幅を広げることが可能です。

その上で、どこの支店に移転してもやることは基本的に同じことなのですから、移転に必要な物資や人材等をしっかり整理しておけば、放射能がどこに飛散しようと対応可能なBCPが出来上がります。

あとは訓練・演習を繰り返して災害発生後のスタッフの対応に委ねることになります。

このような悩みを多くのBCP策定ご担当者が抱えているのは、全ての対応を事前にしてしまわねばならないという強迫観念にとらわれてしまっているからではないでしょうか。

何度も書きますが、災害を完全に予測することは不可能です。(予測できればもはや災害ではありません。) 人事を尽くして天命を待つことがBCP策定においては重要だと思います。